論説・講演など

日本の政党の一大変化と大規模な抗議デモ

(本稿はカレル・ヴァン・ウォルフレンの英語版ウェブサイトwww.karelvanwolferen.comに掲載された文章を和訳したものである)

(2012年7月3日)

 

表面的に見れば、これはきわめて単純な出来事にすぎない。つまり日本でもっとも重要であり、最強であると同時に、世間の批判も多いひとりの日本の政治家が、またしても重大なことをやってのけた、ということだ。状況がみずからの意図とは異なる方向へ進んでいるために、彼は与党・民主党を離脱した。それによって政界は揺るがされ、恐らく同党は分裂にいたるだろう、と思われる。日本のマスコミは早速、やはり「壊し屋」だとおきまりの非難を浴びせた。そしてそれに調子を合わせるように、これまで何度も行なわれた世論調査では、国民が彼にうんざりしていることは明らかなのだから、彼の命運も今度こそ尽きるだろうとの、政治評論家たちのコメントも併せて紹介されていた。

続きを読む


世界に蔓延する「財政緊縮」というウィルス 

(本稿はカレル・ヴァン・ウォルフレンの英語版ウェブサイトwww.karelvanwolferen.comに掲載された文章を和訳したものである)

 

以前、この欄でも記したことだが(メモ書き24)、「思想の自由市場」という概念はナンセンスである。なぜなら思想は取り引きの対象になるようなものでもなければ、その量に限りのあるものでもないからだ。思想、すなわちイデオロギーは感染症と同じように、人に多大な影響を与える。それに感染すれば、人は知的にも感情的にも、熱にうなされたようになるかもしれない。あるいは世界中に蔓延し、歴史を変えてしまうこともしばしばある。さて、このまま議論をしばらく感染症になぞらえて進めていくのが良いと思われるのは、いま世界でとりわけ重要とされる三先進国に、「緊縮財政熱」とでも称すべき新たな感染症が広がりつつあるからだ。過去にアフリカやラテン・アメリカ諸国を長期にわたって苦しめ、貧しい国々をさらなる困窮へと陥れたにもかかわらず、同じことがまたしても繰り返されようとしている。

続きを読む

 

『中央公論』2010年4月号  

日本政治再生を巡る - 権力闘争の謎

いま日本はきわめて重要な時期にある。なぜなら、真の民主主義をこの国で実現できるかどうかは、これからの数年にかかっているからだ。いや、それ以上の意味がある。もし民主党のリーダーたちが、理念として掲げる内閣中心政権を成功裏に確立することができるならば、それは日本に限らず地球上のあらゆる国々に対し、重要な規範を示すことになるからである。それは我々の住む惑星の政治の流れに好ましい影響を与える数少ない事例となろう。
続きを読む

 

尾崎行雄記念財団 2009年度第四回「咢堂記念講演会」(2009年11月25日開催)

日米の共通課題「政治の有効な制御の欠如  

「オバマの失敗と民主党の成功」というサブタイトルは、挑発的かつ性急な結論のように思われるかもしれません。しかし、これはすでに現実になっています。一言で言うと、米国のオバマ大統領は期待された重大な改革政策を実施する希少な機会を逃し、そのような機会はもう再び来ない。一方、日本の民主党は、迅速に動き、日本の現実政治をこの九月までに、過去何十年にもわたる優柔不断な状況へ決して戻ることのないところまで変えてしまいました。

続きを読む